第1回 Tokyo Wine Summit Special Seminar レポート

株式会社ソムリエは、業種・業態の垣根を超え、日々変化し続ける日本のワイン業界を盛り上げていきたいという想いから、ワイン業界を牽引する皆様の研鑽の場として『TOKYO WINE SUMMIT』を立ち上げました。 今後、定期的に世界各国の旬の生産者・ワイン関係著名人を招き、ワイン業界の最前線に立つ皆様と、最新の情報の共有や、意見交換を進めて参ります。

2024年4月1日に東京・六本木「六花-rikka-」にて、第一回が開催 日本を代表する百貨店、スーパーのバイヤーや、星付きの高級飲食店やラグジュアリーホテル、大手飲食チェーンのトップソムリエまで、業界の垣根を越えて、ワインのプロフェッショナルが参加して開催されました。

当日はボルドーのトップシャトーである「シャトー・ムートン・ロスチャイルド」を始め、アメリカの銘酒「オーパス・ワン」チリのプレミアムワイン「アルマヴィーヴァ」などのプロジェクトに関わってきた醸造家であるパスカル・マーティ氏、そして2020年全日本最優秀ソムリエであり、ミシュラン三ツ星の「銀座ロオジエ」のシェフソムリエである井黒卓氏にナビゲーターとしてご参加いただきました。

スペシャルセミナー レポート

スペシャルセミナーでは、ヴィーニャ・マーティーの10ブランドを3つのレンジに分け、3回のセッションで、ワインのプロフェッショナルがヴィニャ・マーティの世界を探求した。

Flight 1 ~ 探求 ~

ヴィニャ・マーティのエントリーレンジの「カサ・デル・セロ」とミドルレンジ「マリポーザ」の4本をテイスティング。
価格の制約の中で、高品質のワインを安定して作るのが、いかに難しい作業なのかが語られた。
井黒ソムリエからは、品種の特徴を素直に表現するカサ・デル・セロ、チリに可能性を見せてくれるマリポーザ。
偉大なワイナリーほど下のレンジが素晴らしいが、ヴィニャ・マーティもその通りとの高評価であった。

Flight 2 ~ 伝統と革新 ~

マーティ氏は、自分ははいつもトラディショナルとイノベーションの間にいると語るように、伝統を重んじつつ、革新的な試みをし続けている。伝統を重んじる「コラゾン・デル・インディオ」シャトームートン直伝のブレンド技術を駆使し、さまざまなスキルを組み合わせた複雑なワイン。カベルネ・ソーヴィニヨンとカルメネールは喧嘩するが、シラーを入れると調和するとの興味深いコメントあり。井黒ソムリエからは、ボルドーのワインでシラーを入れたのはかつての伝統であり、カベルネとシラーの組み合わせははもっと、ポピュラーな組み合わせになっても良いとのコメント。

革新については、日本酒酵母を使った画期的なワイン「ぎんの雫」をテイスティング、マーティ氏が学生時代から暖めていたアイディア、長期の低温発酵を実現するために、獺祭の桜井会長との出会いから、日本酒酵母にたどりつき、超低温の長期発酵を実現できた。 ぎんの雫は5度以下で発酵させており、通常のワインの10倍の約140日の長期発酵。華やかなアロマや、複雑な風味を実現している。井黒ソムリエからは、酵母の風味が表現され、花、バナナのような日本酒のような香りが付与されているとのコメント。

Flight 3 ~ 究極 ~

ヴィーニャ・マーティのプレミアムレンジ 「セール」「カラク」フラッグシップワインの「クロ・デ・ファ」を探求。
セールは単一畑の最高峰。 選び抜かれた畑から、最適な収穫時期を見極め、全て手摘みで作られる。
卓越したブレンド技術を持つマーティ氏だが、モノセパージュは「水墨画の白と黒だけによる美しい世界」と表現。

カラクは、さまざまなスキルを組み合わせなた、精緻なブレンド。 品種を混ぜることによる、カラフルな絵画に例えられる。
前から読んでも後ろから読んでもカラク、バランスの良さを表している。

「クロ・デ・ファ」マーティ氏の最高傑作。ファが、前の奥様の名前、という裏話を挟みながら、カベルネ・ソーヴィニヨンで骨格、メルローで丸みを表現、 シラーはスパイスを表現していることを説明。*ファさんはスパイシーな女性だったとのこと。
モノセパージュの最高峰のセールの樽から、厳選されたワインをブレンドして作られ、最高のワインを作るため、毎年セパージュは変更される。マーティ氏が以前作っていたムートンやオーパスワン匹敵する素晴らしい品質を参加者全員が確認。
井黒ソムリエから、最高のワインは相反する要素を持っているが、( 最高級のカベルネ・ソーヴィニヨンは重いけど軽い、最高級のピノ・ノワールはは軽いけど重い。)クロ・デ・ファもまさにそういうワインとの評価をいただいた。

以上でマーティの世界の3つのセッションが終了。活発な質疑応答が行われた。

最後は、全員で記念撮影を行い、終了。日本のワイン界をけん引するゲストに、世界中で最高峰のワインを作り続けてきたパスカル・マーティ氏のフィロソフィーを知っていただき、ワインの奥深さを感じていただいた、有意義なセミナーでした。

今後も、日本のワイン販売を活性化していくため、株式会社ソムリエは「Tokyo Wine Summit」を開催予定です。

スペシャルゲスト

パスカル・マーティ(チリ ヴィニャ・マーティ醸造家)

フランス出身。 1982年ボルドー大学醸造学科を卒業後、カリフォルニアでの研修を経てバロン・フィリップ・ド・ロッチルド社に入社し、ボルドー格付け1級『シャトー・ムートン・ロートシルト』醸造に携わる。その後ナパヴァレーにて『オーパス・ワン』の立ち上げに携わり、1996年『アルマヴィーヴァ』のプロジェクト参画のためチリに赴任する。2008年に自身のワイン造りの集大成としてワイナリー、『ヴィニャ・マーティ』をチリに設立する。

スペシャルナビゲーター 井黒卓氏(銀座ロオジエ シェフソムリエ)

ロサンゼルス生まれ、沖縄育ち。2011年にソムリエ資格を取得後、カフェ、ワインバー、レストランと様々な飲食業態を経験後、2016年よりミシュラン三つ星である銀座の名店「ロオジエ」のソムリエチームに加わる。 2022年4月から同店シェフソムリエに就任。飲料全般に関する幅広い知識のみならず、ホスピタリティ力や英語力を兼ね備え、若い世代のソムリエのリーダーの一人。
2020年「一般社団法人 日本ソムリエ協会主催 第9回全日本最優秀ソムリエコンクール」優勝 
2024年「ゴ・エ・ミヨ ベストソムリエ」